日本会社法は2006年5月から施行されたものです。従来、厳密には「会社法」という法律は存在せず、商法で言う会社(株式会社・合名会社・合資会社)関連の規定、及び有限会社法で言う有限会社の規定を総称して一般に「会社法」と呼ばれていました。しかし今般、現代の経済情勢の変化に対応し、新たに新会社法を制定しました。大きな変更点は、(1)「有限会社を廃止、全て株式会社に統合」(2)「合同会社の規定」(3)「株式会社の機関設定の自由度を向上」(4)「資本金1円でも株式会社の設立が可能に」の4点です。
新会社法に規定されている会社形態が4つ、即ち、株式会社、合同会社、合名会社と合資会社。うち、合名会社と合資会社が出資者として出資金以上の責任を負わされてしまうことがあるため、あまり利用されません。それに対して、株式会社と合同会社は出資者の責任範囲が出資金以内に限定されているため、多用されています。なお、合同会社は主に株式会社に比べて設立費用が低いことで、最も手軽に採用されやすい形態です。
株式会社でも、機関構成が自由に設計できること、役員任期が自由に設定できること、資本金が1円以上で設立できることなど今までに比べて柔軟な要件で簡単に設立できるようになりました。しかし他方、逆に言えば、設立者(発起人)にとっては、自分の会社に最適な機関設計、役員任期、資本金構成及び会社定款を考えるなど今まで以上に、慎重に設立準備を検討しなければならなりません。
当所が受理した相談案件のなか、安易に会社を設立したものの、会社の形態に相応する出資者の権利義務について十分に把握しておらず、また会社定款の規定についても殆ど理解していないことなど非常識の失敗事例が見受けられます。例えば、合同会社について、「社員(出資者)」、「業務執行社員」等の定義や意味を理解していないとか、出資者(経営者)として事業の利益がでない限りは配当金を受けられないにも関わらず、雇用者と混同して会社から「給与」を受けたいとか、合同会社の性質を殆ど理解していません。
日本は良好なインフラ施設と健全な法制度が整っており、比較的に投資環境が良い点に加え、最近の円安や2020年東京オリンピックの追い風に、中国投資者からの対日本投資が盛んになりつつあります。他方、近年、日本も経済的不況が長期化するにつれ、悪徳業者による不法行為や詐欺事件が多発し、外国投資者に損害を与えてしまう事例が増えています。このような環境下で日本での投資活動を行う際には、必ず事前に十分な調査を行い、専門家のチェックを受けて、自身の投資目的に適合するような会社や制度設計を検討し、発生可能なリスクと回避方法も把握分析のうえ、投資を実施することが望ましいです。