最近,外国人を労働者として雇用する日本企業及び在日外国企業が増えて参りました。当法律事務所は,主に在日中国企業の人事労務を巡るトラブルや中国人労働者とのトラブル解決を図って参りました。その経験に基づいてトラブル解決のための幾つかのポイントを挙げたいと思います。
日本の労働法や雇用環境をよく理解する
日本の労働法は解雇が厳しく制限されていることが特徴です。これは試用期間経過後の本採用においても同じです。例えば,試用期間だから簡単に辞めさせることができると勘違いしている経営者の方がいらっしゃいますが,試用期間中であっても解雇の制限が適用されます。もし,試用期間中の労働者の態度から本採用を拒否したいと考えるのであれば,相応の理由が必要です。本採用拒否しても問題ないかどうかは多数の判決例で判断が示されていますので,是非専門家にご相談下さい。
また,最近,パワハラやセクハラといったハラスメント系の苦情を訴える労働者が増えてきました。ハラスメントとして違法行為になるかどうかはかなり微妙な判断が要求されますので,この点も是非専門家にご相談下さい。
人事労務関係の専門家として社会保険労務士がいらっしゃいますが,社会保険労務士は就業規則の策定や社会保険の専門家であって人事労務を巡るトラブル解決の専門家ではありません。実際に相手方と交渉する際の代理人になることができるのは弁護士だけです。また,トラブル解決について経験や裁判所の考え方からアドバイスできるのも弁護士だけです。
トラブルの解決方法や相手方との対応方法をよく理解する
労働者がユニオンに加入してユニオンから団体交渉の申し入れがあったという実例がありました。在日中国企業の社長は中国人の方であることが多く,そもそもユニオンが何なのかも理解されていないと思います。ユニオンから団体交渉の申し入れがあった場合,団体交渉の席につくことが法律上義務づけられています。団体交渉の申し入れを放置すると,それだけで不当労働行為という違法行為になってしまいます。
また,労働者から労働審判の申立てがなされることもあります。労働審判と労働裁判の違いもよく分かっていない経営者の方がいらっしゃいますが,労働審判は手続きが早期に終了します(第1回審判期日で概ね方向性が決まってしまう)ので早目の対応が必要です。
さらに,これも実際にあったケースですが,労働者が訴訟提起すると同時に記者会見を開くことがあります。記者会見の内容はネット記事等で拡散して企業側のイメージが大きく損なわれる可能性があります。例えば,パワハラを理由に損害賠償請求の訴訟を提起された場合,裁判所の判断が示されていなくても「パワハラが蔓延しているブラック企業」というイメージが定着してしまう可能性があります。
相手方とコミュニケーションが取れる代理人ないし法律事務所に依頼する
日本人と中国人では,言葉や文化だけでなくトラブルに対する姿勢や考え方に大きな違いがあるように思います。日本人であれば自分が勤める企業に反旗を翻すことに非常に後ろ向きな傾向がありますが,中国人は自分の立場や権利を守るためには訴訟も辞さない傾向があります。しかしながら,実際に代理人として相手方と交渉してみるとコミュニケーション不足や考え方の違いに原因があったというケースがあります。相手方の中国人が仮に日本語ができたとしても中国語でコミュニケーションをとれた方がトラブル解決には有利です。当法律事務所は中国律師(中国の弁護士)や中国人スタッフが常駐しており,中国語でコミュニケーションを図ることができます。