中国の模造品,知的財産権対策

1 はじめに

中国の模造品,知的財産権侵害に対する対策に頭を悩めている企業様は非常に多いのが実情です。中には,コピー天国の中国では模造品,知的財産権対策に時間と費用をかけるのが無駄だと割り切って放置しているケースもあると聞いています。

しかしながら,企業様が多大な時間と労力をかけて創出したブランドや技術についてただ乗り(フリーライド)を許すことは,逆に,コンプライアンス上問題となりますし,権利性のある物は事前に登録を行って権利性を獲得し,事後に知的財産権侵害が認められた場合は法的手段を講じて権利性を確保していくことは当然だと考えます。

それを怠ることは知的財産権に対する意識の低い企業と見られ,本当に価値ある物を創造している企業なのか疑われることにもなりかねません。

また,前記のような対策を講じることは一定程度効果がありますし,知的財産権対策に力を入れている企業と思われれば未然予防効果も得られます。さらに,最終的には相手方企業と交渉して解決するとしても,法的手段を講じたり,講じる準備を整えた上での方が優位に立てます。

 

2 事前の対策

まず登録を行うことで権利性を確保できる物は登録をしておくべきです。主に,①特許権,②実用新案権,③意匠権,④商標権があります(これら4つをあわせて「産業財産権」といいます。)。

①特許権とは,自然法則を利用した技術的思想の創作である『発明』についての権利のことで,特許法によって規定される権利です。特許権者は,特許を使う権利を独占することができます。

②実用新案権とは,物品の形状・構造・組み合わせに関する『考案』を独占排他的に実施する権利で,実用新案法によって規定される権利です。

③意匠権とは,新規性と創作性があり,美感を起こさせる外観を有する物品の形状・模様・色彩等のデザインの創作についての権利で,意匠法によって規定される権利です。意匠権者は,登録意匠や類似する意匠を使う権利を独占することができます。

④商標権とは,商品に付された文字・図形・記号・立体的形状等に関する権利で,商標法によって規定される権利です。商標権者は,商標を使う権利を独占することができます。

なお,国内で特許権等を取得していても,そのまま外国で認められるわけではありません。中国で特許権等を主張するのであれば,中国でも特許権等を取得する必要があります。

例えば,日本で商標権を取得している会社が中国で同じ商標でビジネスしようとした場合,既に中国の企業に商標登録されている場合,日本企業が逆に商標権侵害で訴えられることになります。このように特に中国の場合,日本企業が商標権を取得しているブランドを狙い撃ちして抜け駆け的に商標登録しているケースが多くみられますので,中国でビジネス展開する前に事前の調査が必要です。

もし,ビジネス展開し始めてから実は既に中国の企業が商標登録していることが判明するとビジネスの計画自体が根本から覆されて大きなダメージを受けることになります。

 

3 事後対策

仮に,特許権等が侵害された場合には,権利者は,侵害行為の差止め請求や,損害賠償請求を行うことができます。これは特許権以外の権利についても,概ね,同様です。侵害行為を行っている者に対して警告することから始まりますが,その者が侵害行為を停止しない場合には,通常は訴訟で争うことになります。もっとも,早期に差止める必要性が高い場合には,差止めの仮処分を申立てて,まずは侵害行為を仮に差止めてから,腰を据えて訴訟を行うという方法もあります。

また,仮に,特許権等の登録を受けていない場合であっても,商品の形態を模倣する行為や,著名な表示を勝手に使う行為などについては,別途,不正競争防止法で禁止されているため,同法に基づき差止め請求や,損害賠償請求を行える場合もあります。

なお,特許権等に関する各法律には刑事罰に関する規定もありますので,特許権等を侵害した者は,刑事罰に問われる場合もあります。

更には,特許権等を侵害する貨物が輸入されようとする場合には,関税法に基づき,税関長に対し,貨物の輸入を差止めるよう求めるという方法もあります。

 

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