契約書作成の重要性
国内取引にかぎらず,国際契約についても,契約書の作成は重要です。
⑴ 紛争の早期解決
トラブルが発生した場合に,口頭での契約しかない場合には,どういうルールにしていたのかで双方で言い分が食い違ったり,裁判所に訴えようにも証拠がないということになるため,紛争を早期に解決することができません。
そうすると,いつまでたっても代金が支払われない,解約をしたいのに応じてもらえないなどという事態に陥り,当該紛争の後処理に追われて,その他の本業に悪影響を与えかねません。
⑵ 紛争発生の防止
契約書で契約内容を明確に書面化していれば,紛争の早期解決のみならず,紛争を未然に防止することもできます。たとえば,○○をすれば契約を解除されて損害賠償を請求される,△△日までに支払わないと,年14.6%の遅延損害金が発生するなどという条項を契約書に明記しておくと,取引相手に対して,そもそも○○をしないようにしよう,△△日までに遅れずに支払いを済ませようという気にさせることができます。
契約書チェックの重要性
国際取引では,契約前に契約書の内容をチェックすることも重要です。取引で契約書を作成する場合,取引相手に作成を任せきりにすることがありますが,そうすると,一見すると気が付かないような点で,相手に有利な内容となっており,紛争になってからそのことに気が付くということがよくあります。市販のものやインターネットで参照できる契約書のひな型を流用することも,実際の取引に合致していない条項が混ざっていて後にトラブルになったり,重要な条項が抜けていて,肝心な時に役に立たないということもよくあるので,注意が必要です。
とはいえ,たくさんの条項が入った契約書を見ても,どこに気をつければいいのか分かりにくいので,普段から数多くのトラブルを処理しており,問題になりやすいポイントを熟知している弁護士にチェックを依頼することが有益です。
国際契約特有の留意点
⑴ 日本企業と中国企業の間の国際取引の場合には,互いの商慣習や常識が異なることも多いので,日本企業同士の取引以上に,契約で合意した条項を明確化しておくことが必要です。言語についても,日本語,中国語,英語など複数の言語で契約書を作成する場合には,言語間で意味が異なって争いにならないように,いずれかの一つの言語をオリジナルとして,争いがあればその言語の条文の意味で統一させるというような工夫が必要です。
また,紛争になった場合に,どの国の裁判所で裁判手続きを行うか(国際裁判管轄),裁判を行なう場合に,どの国の法律で裁判をするか(準拠法)という2つの大きな問題があります。国際契約の場合,これらを明確にして条項化しておかないと,日本企業であっても,中国の裁判所に行かないと裁判ができないとか,日本の裁判所なのに中国の法律によって裁判が行われるといった予想外の事態を招きます。
このほかにも,国際契約固有の条項が多数存在するので,契約を行う前に,専門の弁護士に相談をすることが大切です。
⑵ さらに,いくつかの類型の契約で特に注意すべき点の例を挙げます。このように,国際契約一般の注意事項に加えて,契約の類型ごとに,トラブルが生じやすく注意すべき条項が多数存在するので,専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
ア 売買契約
船便で輸送中に商品が故障滅失した場合に,売主買主のいずれの負担にするのかを明確にして,所有権の移転時期や,危険負担の時期を定めておく必要があります。また,海外から届いた商品を確認すると,不良品が混ざっていたという場合に備えて,検品の基準を定めるとともに,検品をクリアできない商品について,買主が売主に何を要求できるのか(商品の修補請求か,取替請求か,代金の減額請求か等)を明確に定めておく必要があります。
イ 販売代理店契約
代理店に独占的に販売権を与える場合には,最低購入義務数量や,それを達成できなかった場合の契約解除等のペナルティを定めることが重要です。そうしないと,せっかく海外で商品を売るチャンスだと思っていても,販売店が熱心に商品を販売してくれなかった場合には,契約期間が残っている限り,当該地域において他の代理店を選んだり,自分の会社で直接商品を販売しようとすると,こちらが契約違反となってしまうからです。
ウ ライセンス契約
ロイヤルティは,基本的には,契約相手の売上に比例することになります。そこで,契約相手に独占的な使用権を与えてしまうと,当該契約相手の売上が少ない場合には,あまりロイヤルティ料が入ってこないうえに,別の契約相手にライセンスを使用させることもできないという恐れがあります。そこで,独占的使用権を与える場合には,売り上げに左右されてない最低限のロイヤルティ料(ミニマムロイヤルティ)を定めておくことが重要になります。
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